コラム③

湯垢離(ゆごり)場について

神社にお参りをするとき、
手前にある手水舎で手を洗い、口をすすぎます。

それは簡易的ではありますが、身を浄めるための行為です。

古来の人々は、神社に参拝するときや神聖な行事に参加するときは、
しっかり水の中に入ることで体を浄め、
禊(みそぎ)をおこなっていました。

海で禊をおこなうことを「海垢離」、
川で禊をおこなうことを「川垢離」、
そして、温泉で禊をおこなうことを「湯垢離(ゆごり)」と呼びます。

つまり、湯垢離をおこなう温泉地が湯垢離場というわけなのです。

古くから伝わる神社の近くには温泉があり、
湯垢離場として利用され、栄えてきました。

榊原温泉と伊勢神宮

アルカリ性単純温泉で、美肌の湯として有名な榊原温泉。

清少納言の枕草子にも「七栗の湯」として登場します。

都から伊賀を抜け、
布引山(青山高原)を越えた伊勢の入口にあるのが、この榊原温泉。

当時、地元では榊原温泉を「宮の湯」と呼び、
宮の湯で湯垢離をしてからお伊勢さんに参り、
帰りはまた、旅の疲れを温泉で癒したということです。

伊勢神宮参拝前は、昔の天皇も湯垢離をしました。

この一帯では、榊(さかき)が自生しており、
その榊が伊勢神宮の祭祀に使われたことから
「榊原」と呼ばれるに至った
のだとか。

天正(安土桃山時代)に全国で湯治ブームが巻き起こった際は、
ここ榊原温泉にも大湯治場ができ、
大変な賑わいを見せたようです。

湯の峰温泉と熊野本宮大社

湯垢離でもっとも有名なのは、湯の峰温泉だと言われています。

湯の峰温泉は4世紀ごろ、
大阿刀足尼(おおあとのすくね)によって発見された、
最古の温泉の一つです。

その後、歴代の上皇による熊野詣でにより、
その名が一般にも知られるようになりました。

古湯と呼ばれる温泉は日本各地にありますが、
湯の峰温泉が最古であるのではないかという説もあります。

人々は湯の峰温泉で湯垢離をおこない、
心身を浄めてから紀伊半島の聖地である熊野三山の一つ、
熊野本宮大社に参拝したそうです。

熊野は古来より黄泉の国と通じていると信じられており、
「よみがえりの地」として、
多く人々から信仰を集めていました。

玉造温泉と出雲大社

玉造温泉も、大昔より美肌の湯として知られる温泉です。

玉湯川のほとりに湧出する玉造温泉は、
「一度入れば肌が若返り、二度入ればどんな病も治す」と言われ、
「神の湯」と称えられた、日本最古の温泉の一つ
です。

昔は、出雲大社にお参りする前に、
この温泉で湯垢離をおこなっていたと言われています。

出雲大社に参拝するなら、ぜひ玉造温泉も一緒に訪れてみましょう。


旅先で神社などを訪れるときは、
先に神社に参拝し、夜は宿で温泉に入るということがほとんどかもしれません。

昔は温泉で身を浄めてから参拝するという習慣があったというのは興味深いですね。

昔の人々の神々に対する信仰心の深さ、そして敬意の表れが感じられますね。